日本にはアート市場がない、と嘆く声を何十年も聞いてきた。
確かに、世界のアート市場全体の中で日本が占める割合はわずか1%程度であり、これは先進国の中では最低ランクである。
しかし、だからといって「日本にはアート市場がない」と結論づけるのは早計である。
むしろ、日本の市場規模が世界の100分の1であるということは、世界には日本の100倍ものアート市場が存在するということでもある。
そのため、多くのアーティストが「最初から海外を目指すべきだ」と考えるのも無理はない。
しかし、アートは単なる商品ではなく、ファンビジネスでもある。
映画や音楽と同じように、アーティストには熱心なファンが必要だ。そして、そのファンは身近な文化や環境の中で形成されることが多い。
日本の風景を見て育ち、日本の文化を経験してきた日本人こそが、日本のアーティストにとって最も親しみやすい顧客層なのだ。
海外で成功するためには
ファンを作るには、まず彼らが何を求めているのかを理解することが大切だ。
熱狂的な支持を得られるポイントが分かれば、その延長線上で市場を広げていくことができる。
つまり、日本国内で実績を積み、それをどこまで海外に伸ばせるかが重要なのである。
国内で認知度の低いアーティストが、いきなり海外で成功する可能性は極めて低い。海外のアート市場は競争が激しく、単に「海外で売りたい」と願うだけでは通用しない。では、どうすれば海外で成功できるのか?
そのヒントは、すでに海外で成功を収めた日本人アーティストたちにある。
たとえば、草間彌生や村上隆は「海外で火がついたアーティスト」として知られている。
しかし、彼らは決して国内で無名だったわけではない。すでに日本国内で一定の評価を得ており、その上で海外へと活躍の場を広げたのだ。
また、彼らは単に作品を海外に持ち込んだのではなく、海外のアート市場のルールを学び、そこでどのように戦うべきかを理解していた。
草間彌生は若い頃に渡米し、ニューヨークのアートシーンの中で自己を表現する方法を模索した。
彼女は絵を描くだけでなく、小説やエッセイを執筆し、自らの言葉で作品の価値を伝える努力をしていた。こうした「海外で生き抜くための勘所」を身につけた上で、彼女は成功を収めたのである。
海外で戦うためには、まず国内での基盤を築くことが不可欠だ。そして、海外の市場で受け入れられる作品を作ることも重要である。
たとえば、日本国内では「写実の美人画」は一定の人気があるが、これをそのまま海外に持ち込んでも成功する可能性は極めて低い。
欧米には写実の美人画が評価される土壌が皆無だからだ。
海外市場に通用する作品を作りつつ、日本国内で着実にファンを増やしていく。この両輪がかみ合って初めて、海外での成功が現実のものとなるのだ。
海外で通用する作品を知る
では、現時点で海外で通用する作品とはどのようなものか。
それを知るためには、欧米の一流アートフェアを見るのが最も確実な方法である。各トップギャラリーがどの作家を推していて、どのような作品が人気を集めているのかを観察することで、世界のアート市場のトレンドをつかむことができる。
欧米に行かずとも、香港のART BASEL Hong Kongや上海のWestbund Art & Designに足を運べば、世界中のトップギャラリーが集結する場を体験できる。
こうした場で最新の傾向を把握し、何が評価されているのかを知ることは、海外市場で成功するための第一歩となるだろう。
アート市場が小さいと嘆くよりも、まずは国内でファンを作り、実績を積むことが先決である。
そして、その延長線上に海外展開を見据えることが、持続的な成功への道となる。
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F